8月X+1日(水)ナイロビからマサイマラへ
空港を出たところで、せっかくなのでコーヒーショップに立ち寄る。
テイクアウトのブラックコーヒーがあり、1杯250シリング。手で持てないほど熱いが、早朝で冷え込んでいたのでありがたい。
ほんの一瞬ガイドさんと離れただけで、すぐにタクシーの呼び込みに声をかけられる。
日本人が空港周辺をうろうろしていれば、そりゃそうなるよな、と妙に納得する。
改めてガイドさんの車を見て驚いた。
巨大なランドクルーザーで、いかにもサファリ仕様。水陸両用なのでは、と思うほどの迫力だ。
運転手含めて8人乗りだが、今回はこれを貸切。
荷物を詰め込み、9時ごろ、マサイマラへ向けて出発。
移動時間は休憩込みで約5時間とのこと。
走り出してすぐ、同行の友人がガイドさんに「気をつけることはありますか?」と質問していた。さすがだ。
注意点として教えてもらったのは主に以下のこと。
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写真撮影について
軍や警察の施設、軍人・警察官は撮影禁止
道を歩いている人や立っている人も基本的にNG
(どうしても撮りたい場合は、必ずガイドに相談)
お店の中も撮影しない -
街中を勝手に歩かないこと
そして、「今日は1日で春夏秋冬を体験できますよ」と言われる。
どういう意味だろう、と思っていたが、後でその言葉の意味がよく分かることになる。
ということで、車窓の写真は控えめにして、ひたすら進む。
空港を出てすぐに広がる大草原。ここがナイロビ国立公園だと聞いて驚く。
「公園っていう規模じゃないよね」と娘も目を丸くしていた。
しばらく走って高速道路へ。
ETCのようなレーンがあり、料金所では現金ではなく、スマホ決済のような仕組みで支払いをしていた。
「思ってたよりずっとキャッシュレスだね」と、ここでも意外な一面を見る。
高速道路はずっと続くのかと思いきや、30分ほどで終了。
その後はバイパス、さらに一般道へ。片道1車線で、山を登ったり下ったりを繰り返す。
遅いトラックを追い越しながら進むのだが、なかなかスリリング。
「これ、結構アトラクションだね」と娘。確かにそんな感じだ。
2時間ほど走ったところで、グレート・リフト・バレー(大地溝帯)を望む展望台で休憩。
数千キロ続く巨大な谷を一望でき、思わず声が出るほどの景色だった。

トイレは公共のものではなく、お土産屋さんのトイレを借りる仕組み。
必ずお店を通ってからトイレに行く動線になっているため、店員さんの呼び込みを全身で浴びることになる。
ガイドさんから「今日は見るだけにしておいてください」と言われていたので、
声をかけられても「No, no」と言いながら通過。
魅力的な品物はたくさんあったが、まだ初日。値段も聞かずに外へ出た。
その後、ガイドさんと一緒に峠の茶屋のような場所へ。
コーヒーと、現地の揚げパンのようなものを注文する。
生地をその場で伸ばして揚げたもので、揚げたてをいただく。
正直、見た目はかなり素朴で、「お腹大丈夫かな」と少し心配になるが、
コーヒーと一緒に食べると、ほんのり甘くて美味しい。

3人で1つをあっという間に完食。
娘も「これ、意外とおいしい!」とよく食べていて、ひと安心。
ところが、ガイドさんが「先に車動かしておきますね」と言って出ていった後、
こちらも店を出ようとすると、「ペイペイ!」と声をかけられる。
最初は挨拶かと思ったが、どうやら違う。
「PayPay! 1200」と、支払いを求められているらしい。
どうやらガイドさん、自分の分だけ払って行ってしまったようだ。
そう言ってよ、と思いつつ、現地通貨を持っていない。
USDでいいか聞いてもダメ、カードも使えない。
困っていると、「隣で両替してきて」と言われる。
まさかこんな峠の茶屋の隣に両替商があるとは思わなかった。
10ドルをシリングに両替し、なんとか支払い完了。
相場はよく分からないが、とにかくUSDを持っていて助かった。
支払いを終えて、ようやく出発。
駐車場には白線もなく、道路側の車が動いてくれないと出られない。
しばらく待って、10分ほどで再出発した。
さらに1時間半ほど走り、もう一度トイレ休憩。
似たようなお土産屋さんで、同じようにトイレを借りる。
ここまでも大変だなと思っていたが、本当の試練はここからだった。
「ここからはダートロードです」と言われた瞬間から、ずっと砂利道。
揺れは激しく、土埃もすごい。
咳き込みながら窓の外を見ると、道端にはヒヒが座って物乞いをしている。
ガイドさん曰く、
「動物は基本的に人を怖がりますが、ここのヒヒだけは例外。車からゴミや食べ物がもらえると学習してしまったんです」とのこと。
さらに進むと、道の途中でボンネットを開けて止まっているサファリカーが1台。
車が故障したらしく、乗っていた2人も困っている様子だった。
同じ方向だということで、結局一緒に乗せることに。
インド系のイギリス人で、UKから来たとのこと。
嬉しかったのか、ずっとドライバーと楽しそうに話していた。
そんなこんなで、ようやくロッジの近くまで来たが、
ガイドさんも初めてのロッジらしく、場所が分からない。
看板も目印もなく、電話で確認しながら、なんとか到着。
到着したのは14時半。
「やっと着いた……」と、全員が同じ気持ちだった。
朝はあれだけ寒かったのに、昼間は暑い。
高地とはいえ日差しは強く、半袖になりたいが、蚊が怖いので薄手の長袖を羽織る。
疲れてはいるが、昼食の準備ができているとのこと。
簡単なサンドイッチかと思いきや、コース料理だった。
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スープ(クミンが効いていて美味しい)
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チキンソテーとライス(ココナッツソース風)
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デザート(ストロベリーアイス)
「そんなに食べられるかな」と思いつつも、結局きちんと完食。
娘もちゃんと食べていて、元気のバロメーターとしては合格。
食後、部屋へ案内される。
テントロッジで、外壁はテント生地。ファスナーで開閉する造りだ。
中央がリビング、左右に1部屋ずつあり、それぞれにトイレとシャワー、洗面台付き。
虫も、きちんと閉めていれば入ってこなさそうだ。
16時、早速1回目のゲームドライブへ出発。
走り出してすぐ、あちこちに動物がいる。
ただ、自分の中で「通常キャラ」と「レアキャラ」ができてしまい、
ライオンや象はなかなか出会えない存在だ。
無線で情報を集め、すれ違う車と挨拶しながら
「何を見た?どこにいた?」と情報交換をする。
これが“ゲームドライブ”なのだと実感する。

そしてついに、ライオンの情報をキャッチ。
現場に向かうと、すでに何台か車が集まっている。
そこにいたのは、堂々と歩くオスライオン。
初日から、しかも起きている姿を見られるとは思っていなかった。

さらに象やキリンも次々と現れる。
あまりの近さに、ただただ感動。

夕日も信じられないほど美しく、
大平原の中を動物を探しながら走る時間は、まさに非日常だった。

ロッジに戻り、シャワーを浴びる。
お湯は出にくかったが、昼間の暑さもあり、水で十分さっぱり。
19時半から夕食。
スープ、メイン(牛肉のソテー)、デザートという構成。
娘はパンが気に入ったようで、よく食べている。
ちゃんと食べているかどうかで体調が分かるので、ここでもひと安心。
ビールを1本頼む。
きちんと冷えていて、乾燥した空気の中で飲むと格別だった。
部屋に戻ると、テントは夜仕様に整えられていて、
ベッドもきれいにセットされ、毛布も用意されていた。
夜はかなり冷え込み、毛布は必須。
ベッドも寝具も清潔で、枕もふかふか。
移動と初サファリで、全員が完全に疲れ切っていたのか、
あっという間に眠りについていた。